救急外来の受付で車椅子を借り、夫を連れていく。夫は座っているのも辛いようで、「気持ちが悪い。しんどい。寝かせてほしい」と言うので、外来の長椅子に横にならせてもらった。手足が真っ白で、すごく冷たかった。「寒くない?」と聞くと、「もう分からん。足も手も痺れてる」と言った。「動かせるん?」と聞いたら、足先と指先を動かして見せてくれた。
夫の足をさすりながら10分ほど待っていると、看護師が来てくれた。熱を測ってもらうと、37.6℃だった。「あらぁ、熱あるね」と看護師が言って、またパタパタと救急の部屋に戻っていった。「熱あるって。案外インフルやったりしてねぇ」「それやったらそれでええわ」と夫とポツポツ話していると、また看護師がきて、「奥さんはそこでちょっと待っといてね」と夫を中に連れていった。
中の様子がわからないまま、1時間くらい待ったと思う。時々義両親と連絡をとりながら、年末年始の予定のことを考えていた。年始の仕事はどうなってたっけ?あー、お正月に診療当番が当たってたけど、それは行けるかなあ。とりあえず明日からの旅行はキャンセルしないと。子供達の冬休みはいつまでだっけなあ。入院準備してきたけど、インフルなら帰ることになるし、子供たちに移らないようにしないとなあ。
この時点でも、私はそこまで心配はしていなかった。脳のMRIは昨日撮影済みで、異常がないことは分かっていたし、仮に眼科で指摘された神経炎でも数日の入院で済むと思っていたし、年末年始の予定を多少変更するだけだろうと思っていた。
年末の救急外来は、インフルエンザらしき患者(おでこに冷えピタを貼っている)や転倒して目の上を青く腫らしている患者で溢れかえっていた。「この年末に、みんな大変やなあ」なんて、ぼんやり思っていた。しんどそうな患者を介抱する家族を見て、なんだか同志のような気持ちにさえなった。朝8時でもひっきりなしに入ってくる人たちに紛れて、入院バッグを抱えながらひっそりと座っていたら、「奥さん、先生とお話してください」と看護師に呼ばれた。
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