ドーン!
朝6時半、大きな音がして、部屋が揺れた。「夫が倒れた!」とすぐにピンときて、即座に飛び起きた。夫の寝ていた部屋に向かうと、夫が壁にもたれかかるようにして、ひっくり返っていた。「どうしたん!大丈夫?」と起こそうとしても、足に力が入らず、すぐに倒れ込んでしまう。なんとかトイレまで連れていくが、80キロ近い夫の体を支えるのは大変で、必死に抱き抱えながら部屋に戻った。
「あかん、立てない。二重に見えて気持ち悪い。今日仕事に行けない」
辛そうに息をつきながら、夫が言う。足に力が入らない夫をみて、「もしかして、ギランバレーじゃないの?」と聞いた。「・・・その可能性もゼロではないって、昨日言われてた」と夫がぽつりと答えた。この時の勘が、まさか本当に当たるなんて、この時は思いもよらなかった。
私は冷静だった、というよりも無理に冷静になろうとしていたのか、頭の中がギューンとフル回転していた。どうやって夫を1階のリビングにおろそうか・・・最初の難関はそこだった。近くに夫の両親が住んでおり、年末の帰省で義弟が帰ってきているのを知っていたので、すぐに呼んで家に来てもらった。学生時代アメフトをやっていた義弟でも、力の入らない大の大人を運ぶのは大変そうで、額に汗をかきながらもなんとか階段をおろしてくれた。私1人では到底無理だったので、本当に助かった。
即入院になると思い、とりあえず思いつく限りの入院用品をカバンに詰め込んだ。帝王切開を3回経験している自称・入院のプロなので(笑)入院時に必要な荷物は大体想像がついた。夫は少しパニックになっていたのか、駆けつけた義父に「このまま仕事ができなくなったらどうしよう」「ごめん、ごめん」と泣きながら話していた。そんな夫を横目で見ながら、私はバタバタと準備する。子供たちを叩き起こし、「パパを病院に連れていくから、ばあばのお家で待ってなさい!」と、子供たちの着替えと朝食用のおにぎりを準備し、義母宅に連れていく。そして、保険証と入院バッグをかかえて車のエンジンをつけ、そのまますぐに義弟に夫を後部座席に乗せてもらった。
【病院に行くまでに気をつけたこと】
・着替えさせない(前開きのパジャマのまま)
・何も食べさせない(脱水や低血糖の可能性もあるので、少しの水分とラムネだけ口に含ませる)
・靴はかかとのあるスリッパ
・入院用バッグ(着替え2着・下着・バスタオル2枚・フェイスタオル2枚・洗顔用品・普段飲んでいる薬・使い捨ての割り箸とスプーン・ふりかけや個包装のおやつ・保冷用の小さな水筒・コップ・ビニール袋・マスク約10枚・蒸気でほっとアイマスク・ポケットWi-Fi・充電器類・3000円程度入れた小銭入れ)
余談だが、救急車を呼ぶという方法もあったが、夫が前日に受診した病院と直接電話をして、最終的に自家用車で行くことにした。救急隊から病院に直接連絡をとってもらった場合、受け入れしてもらえるか尋ねたところ、「その時点での救急外来の状況によるので、絶対とは言えない」という返事だったのだ。もちろんそれは当然の答えで、私も夫も「そりゃそうだよね」と納得した。それなら、自分たちで救急外来に行った方が、確実に診てもらえると思い、とにかく安全運転と自分に言い聞かせながら、車を運転した。
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